シンガポールの会社法では、シンガポール居住の取締役を最低1名選任しなければなりません。が、必ずしも身内だけで居住取締役を用意できるとは限りません。
例えば、会社の新規設立のためには、名義だけのシンガポール居住の取締役を一時的に利用する必要があります。すなわち、会社設立前は、取締役の候補者は(会社自体がないため)就労ビザを取得することができず、したがってシンガポール居住者としても扱われません。そのため、自身だけでは会社法で要求されている取締役要件を満たすことができず、シンガポール居住者の取締役を選任しなければ会社を設立することができません。そこで、まず、シンガポール居住者から名義だけを借りて取締役になってもらい会社法の要件を満たして会社を設立し、設立後に、取締役候補者がその会社か就労ビザの発給を受け晴れてシンガポール居住者となった後に、自身が居住者として取締役になる、と流れが新規設立の実務として行われています。
この時に、名義だけ貸してくれるシンガポール居住者の取締役を、ノミニーダイレクターといいます。
ノミニーダイレクターは、会社新設時以外でも、会社という組織を維持するために利用されます。例えば、将来の活動に備えて休眠会社として会社をとっておく場合などで、日本人取締役が現地に居住していない場合でも、法形式上は、シンガポール居住の取締役が必要であるため、物言わぬ取締役であるノミニーダイレクターが利用されます。
ノミニーダイレクターは、名義だけとはいえ、法律上は取締役ですので、しっかりと素性の知れた人物を選任すべきなのは言うまでもありません。