移転価格文書化制度 移転価格制度④

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日本の移転価格制度④ 最後に移転価格に関する文書化についてです。

平成28年度(2016年)税制改正で、要件に当てはまる場合、①国別報告事項、②マスターファイル、③ローカルファイルの3つの移転価格文書の提出、または、作成・保存が義務化されました。

移転価格に関する文書の内容

① マスターファイル

(親会社が作成するもの)
(直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の会社は提出を要する)

多国籍企業グループの組織・財務・事業の概要等、多国籍企業グループの活動の全体像に関する情報。多国籍企業グループ内の重大な移転価格リスクの存在の有無を評価するために使用
○ グループの組織図
○ 事業概要
○ 保有する無形資産の情報
○ グループ内金融活動に関する情報
○ グループ全体の財務状況と納税状況 等

マスターファイルは、グループ全体の状態を把握できるようにするためのものであり、税務調査等での説明資料としても内部の管理資料としても有用性は高く、法定の作成義務がなくても、作成を進められることがある。

② 国別報告事項(CbCレポート)

(親会社が作成するもの)
(直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の会社は提出を要する)

多国籍企業グループの各国別の所得、納税額の配分等、多国籍企業グループの各国別の活動状況に関する情報。多国籍企業グループ内の移転価格リスクの存在の有無を評価するために使用。
親会社・子会社所在国ごとに多国籍企業グループの下記情報
○ 雑収入・所得・税額・資本金等の財務情報
○ 従業員数
○ 有形資産額
○ 主要事業 等

③ ローカルファイル

(親・子会社等がそれぞれ作成するもの)

関連者間取引における独立企業間価格を算定するための詳細な情報。独立企業原則の遵守状況を確認し、移転価格課税を行うために使用。
○ 組織図
○ 経営戦略
○ 主要な競合他社
○ 主要な関連者間取引と取引背景
○ 移転価格算定根拠
○ 財務諸表 等

ローカルファイルは、海外子会社等との「前期」の取引金額が50億円以上(ロイヤルティなど無形資産取引の場合は3億円以上)の場合、確定申告書の提出期限までに作成し(これを「同時文書化」と言います)、原則として、7年間保存する義務があります。

この同時文書化義務がある場合には、税務調査において求めがあった場合、税務調査官が指定する45日以内の期日までにそれを提出する必要があります。同時文書化義務がない場合でも、税務調査において、税務調査官がそれを必要と認めた場合、調査官が指定する60日以内の期日までにローカルファイルに相当する書類を当局に提出する必要があります。これらの書類が指定された日までに税務当局に提出されない場合には、税務調査官は推定課税をすることが可能となっていますので、海外取引が重要な会社は、税務調査があった場合には指定日以内にローカルファイルの提示ができるよう、予め準備をしておくことが必要と考えられています。

移転価格制度①から④で簡単に制度を見てきましたが、本制度の趣旨は利益の付け替えによる租税回避行為を防止することにあります。
納税者は、自らが法を遵守していること、すなわち、国外関連者との取引において独立企業原則に則って移転価格を決定していることを証明する必要があり、その手段として上記の文書が求められているということですね。

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