無形資産

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IFRSの無形資産に関する会計基準は、IAS第38号「Intangible assets」に規定されています。

無形資産とは

IAS第38号では、まず、資産を「過去の事象の結果として企業が支配し、かつ、将来の経済的便益が企業に流入することが期待される資源」と定義し、無形資産は、そのうち「物質的実体のない識別可能な非貨幣性資産」であると定義し、ソフトウェア、特許権、商標権、著作権、漁業免許、輸入割当額(量)、独占販売権、顧客名簿などを例示として挙げています。

当初認識および当初測定

無形資産は、①将来の経済的便益が流入する可能性が高く、②取得原価が信頼性をもって測定できる場合にのみ認識します。

取得原価とは、支払った現金または 現金同等物の金額、あるいは取得時または生産時の資産の取得対価の公正 価値のことをいい、当初の測定は、この取得原価で行います。

費用の認識

無形項目に関連する支出であっても、 無形資産としての認識要件を満たさず、無形資産の取得原価の一部を構成しない支出は、発生時に費用として認識されます。

 

日本基準との違い

① 当初認識後の測定

ISA16号の有形固定資産の会計処理と同様に、原価モデルか、再評価モデルかを選択できます。日本では再評価モデルという選択肢はありません。
原価モデル
取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除した価額で計上する方法。
再評価モデル
定期的に公正価値を測定し、貸借対照表価額をその公正価値に置き換える方法。

再評価モデルは、無形資産の公正価値が活発な市場を参照することにより決定可能な場合にのみ認められています。

活発な市場とは、①市場内で取引される対象は同質であり、②自発的な買手と売手を通常いつでも見つけることができ、③その価格が公表されている市場のことをいい、ISA38号では、特定地域で自由に譲渡可能なタクシーのライセンス、漁業免許又は生産割当枠などを例示しています。(日本ではあまり採用できそうにもないですね)

②耐用年数を確定できない無形資産の償却禁止

IFRSでは耐用年数を確定できない無形資産は、償却することができず、毎期減損のテストを実施

企業は無形資産の会計処理に当たって、まず無形資産の耐用年数が確定できるかどうかを決定します。関連するすべての要因分析を行った上で、正味のキャッシュ・ インフローがもたらされると期待される期間が予測できない場合には耐用年数は確定できないと判断され、その場合には償却は行わず、最低でも年に1度の減損テストを実施して貸借対照表価額の妥当性を確かめることになります。

③開発費の資産計上

日本基準では、研修開発費は原則として費用処理されますが、ISA38号では、研究開発活動を研究活動と開発活動に区分し、開発活動での支出のうち、以下の6要件を満たしたものは資産計上しなければなりません。

  1. 無形資産を完成させることが技術的に実行可能であること
    2. 企業が無形資産を完成させ、使用・売却する意図を有していること
    3. 企業が無形資産を使用・売却する能力を有していること
    4. 無形資産から経済的便益を引き出す手法(市場や使用形態等)が特定されていること
    5. 無形資産を完成させ、使用・売却するために必要な資源を利用できること
    6. 開発期間中の無形資産に起因する支出を信頼性をもって測定できること

なお、上記6要件を満たすものについては資産計上しなければなりませんが、同時に資産計上した場合にはこの6要件を満たしていることを客観的に立証しなければならず、そのための企業内の仕組みづくりも必要になります。

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