棚卸資産

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棚卸資産に関する会計基準は、IAS第2号「Inventories」に規定されています。

棚卸資産とは

IAS2号では、棚卸資産を以下のように定義します。

・通常の事業の過程において販売を目的として保有されるもの

・その販売を目的とする生産の過程にあるもの

・生産過程または役務の適用にあたって消費される原材料または貯蔵品

棚卸資産の評価

原価

原価には、① 購入原価 ② 加工費 ③ 棚卸資産が現在の場所および状態に至るまでに発生したその他の費用 が含まれます。仕損に係る材料費、労務費又はその他製造費用のうち異常な金額、製品の保管費用、販売費用などは原価には含まれません。

正味実現可能価額

「通常の事業の過程における予想売価から、完成までに要する見積原価および販売に要する見積費用を控除した額」で、企業が通常の事業過程における棚卸資産の売却により実現されることが予測される正味の金額をいいます。

低価法の適用

棚卸資産は、原価と正味実現可能価額とのいずれか低い金額により測定しなければなりません。評価額が帳簿価額を上回った場合は、過去の評価損額を限度として戻入を行います。評価の方法は洗替法のみが認められています。

棚卸資産原価の算定方法

① 個別法 ② 先入先出法 ③ 加重平均法 が認められています。

代替性がない棚卸資産の原価および特定のプロジェクトのために製造され、かつ、他の棚卸資産から区分されている財貨または役務の原価は、個別法によって配分しなければなりません。それ以外の原価は、通常先入先出法または加重平均法によって配分しなければなりません。

棚卸資産原価の測定方法

実際原価法が原則です。標準原価法および売価還元法は、適用後の計算結果が実際原価と近似であることを条件に、簡便法として認められています。

日本基準との関連で留意すべき事項

日本の棚卸資産に関する会計基準は、すでにIFRSを意識してコンバージェンス済みであるため、

IFRSとの間に重要な差異はありません。日本基準との比較で論点となる事項は以下の通りです。

【 論点となる事項(IFRSと日本基準に差異なし)】

① 後入先出法は認められていません。これは日本基準でもIFRSでも同じです。

② IFRSの加重平均法とは、日本基準の移動平均法、総平均法とも含む概念と考えられています。したがって、この点において日本基準とIFRSに差異はありません。

③ 最終仕入原価法は認められていません。これも日本基準でおIFRSでも同じです。

期末在庫のすべてが、その期の最後に仕入れられたものであるという仮定のできる状況というのは想定しにくいですし、実際にそうならば、個別法でも先入先出法でも結論が同じはずなので、特に最終仕入原価法を認める必要はないからです。

【 論点となる事項(IFRSと日本基準に差異あり)】

① 棚卸資産の範囲

日本基準では、「販売活動及び一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨」が貯蔵品として棚卸資産に計上されますが、IFRSではこのような貯蔵品は棚卸資産には含まれていません。

② 棚卸資産原価の測定方法

日本基準では、標準原価法と売価還元法の採用に明文上制限はありません。

一方IFRSではこれは、標準原価法と売価還元法はあくまで実際原価法の観便法という位置づけです。「適用結果が実際原価と近似であること」という条件を満たした場合にのみ、この方法を採ることができます。

③ 製造間接費の配賦

日本基準では、固定製造間接費の配賦率は、予定操業度に基づいて計算し、原価差異は原則として売上原価に賦課します。原価差異が多額な場合には、これを売上原価と棚卸資産に配賦します。

一方、IFRSでは、固定製造間接費の配賦率は、正常生産能力に基づいて計算します。原則として実際生産水準が変化した場合にも、配賦率は変化せず、したがって製品(原価集計単位)ごとの原価は変化しません。結果として、発生した実際原価と配賦原価との差額は、自動的に原価計算に取り込まれ期間費用として処理されることになります。ただし、生産水準が異常に上がってしまって、原価配賦額が異常に大きくなり、棚卸資産への配賦原価が原価発生額を大きく上回るような場合には、配賦率を見直す等の調整が必要となります。固定製造間接費の製品(原価集計単位)の負担額は一定としつつも、棚卸資産の原価負担額の合計(BS計上額)が、発生原価を上回るような事態、つまり生産水準の多寡によって利益がでてしまうようなことは許容されないというのが理由でしょう。

④ 低価法の処理方法

日本基準では、洗替法と切放し法の2種類が認められています。ただし、税務上は洗替法しか認められていません。IFRSでは、洗替法のみで、切放し法は認められていません。

 

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