包括利益計算書、これは従来の日本の立場からするとIFRSへのコンバージョンを強く意識されたものだったといえます。
包括利益の概念自体が、BS重視の考え方から生まれたものです。つまり、BSを公正価値で示そうとしたときに、どうしても資産負債の差額を資本とPL利益の変動だけでは表現できなくないため、事業により獲得したPLに計上されるもの以外の損益または資産負債の変動要因をプールする包括利益の概念が必要になったんですね。
すでに日本の財務諸表に組み込まれて随分経ちますので、その記載内容など具体的な内容は割愛しますが、基準では①連結財務諸表だけに適用されている②1計算書方式と2計算書方式が認められているという点もIFRSを強く意識したものといえます。
①はIFRSは連結財務諸表だけなので、IFRSへのコンバージェンスを意識した日本の包括利益計算書も連結財務諸表作成会社にだけにその作成を要請しています。この結果、個別財務諸表の開示しかしていない会社の決算書には、包括利益計算書がないという歪みがうまれています。
②の1計算書方式と2計算書方式ですが、日本基準では95%以上が2計算書方式、すなわち損益計算書と包括利益計算書を分離したものを採用していると言われています。日本では、従来からPL重視なので、やはり損益計算書は単独で残しておきたいという気持ちが働いた結果だと思います。
では、欧米では①計算書方式が多数派かというと、どうやらそうではないようです。結局、BS重視とはいうものの、一般の投資家は当期の業績が気になるわけですから、PLを軽視するなんてことにはならないんですね。