個人所得税 居住者と非居住者

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所得税法における「居住者」判定

所得税法では、個人を「居住者」と「非居住者」に区分し、課税範囲を定めています。
日本国籍の「居住者」は、所得がどの国から生じようとも、すべての所得に対して、日本で所得税が課税されます。一方、「非居住者」は原則として生活の拠点がある外国にて所得税が課され、日本で課税されるのは、日本国内において生じた所得(国内源泉所得)のみとなります。

日本で所得税が課される範囲は「居住者」「非居住者」の別によって異なるため、海外で勤務する方は、ご自身が「居住者」に該当するのか「非居住者」に該当するのかを、まず確認しておく必要があります。

ここに所得税法上、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人と定義され、「非居住者」は、居住者以外の個人と定義されています。
「居住者」の判定に用いられる「住所」とは、個人の「生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは客観的事実、すなわち住居、職業、国内において生計を一にする配偶者その他親族を有するか否か、資産の所在等、によって判定します(所得税法基本通達2-1、最高裁昭和63年7月15日判決)
「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」です。

というのが、所得税法上の「居住者」と「非居住者」の話し(原則論)です。

租税条約上の「居住者」判定

租税条約では、わが国と異なる規定を置いている国との二重課税を防止するため、共通の居住者の判定方法を定めています。すなわち、「恒久的住居」、「利害関係の中心的場所」、「常用の住居」そして「国籍」の順に考えて、どちらの国の「居住者」となるかを決めます。

租税条約上の「居住者」の他の国での所得に対する所得税の納付方法

居住者が他国での勤務から得た給与所得(役員報酬は含まない)に関して、次の(ア)から(ウ)に該当する場合は、居住国だけで所得税を納めることができる。
(ア)報酬の受領者が継続するいかなる12箇月の期間においても合計183日を超えない期間当該他方の締結国内に滞在すること。
(イ)報酬が当該他方の締結国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。
(ウ)報酬が雇用者の当該他方の締結国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと

上記を総合すると

日本法人の取締役等の役員ではなく、シンガポールに183日以上滞在勤務している方は、シンガポールで所得税を納めれば問題ないでしょう。
だからといって、「183日海外にいれば日本の非居住者になるので日本で税金を払う必要がない」という意味ではありません。海外滞在日数合計が183日以上で、日本の滞在日数が183未満であっても、海外では複数の国に滞在しており日本のコントロールが強いケースや日本に家族が住んでいるケースなど、諸事情から実質的判断により日本の居住者であると判定される場合もあり、その場合には日本で納税義務を負う場合もあるからである。

なお役員報酬に関する所得税の取り扱いについては以下を参照してください。
個人所得税 役員報酬

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