シンガポールの会計制度

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すべてのシンガポールの会社は、原則として、シンガポールの会計基準にしたがって適切な決算書を作成しなければなりません(シンガポール会社法201条)。

また、取締役は、適切な決算書を作成するために内部統制などの社内のシステムを適切に構築する責任があり、また会計データやその証憑書類を少なくとも5年は保存しておかなければなりません(シンガポール会社法199条)。

会社が作成した決算書は、原則として会計監査を受け、定時株主総会で承認される必要があります。

決算書の作成

概要

原則としてすべてのシンガポールの会社は、会計基準にしたがって適切な決算書を作成しなければなりません(シンガポール会社法201条)。

適切な決算書作成のため、取締役は内部統制等の社内システムを構築する責任があり、会計データやその証憑書類を少なくとも5年は保存しておかなければならなりません(シンガポール会社法199条) 。原則として、決算書は会計監査を受け、定時株主総会で承認される必要があります。 なお、休眠会社は会計監査が免除されるのみならず、算書の作成も定時株主総会の開催も不要となりました。

スケジュール

会社は原則として決算日から6ヶ月以内に定時株主総会を開催しなければなりません。 定時株主総会では、監査済みの決算書について株主の承認を得る必要があります。

決算書が定時株主総会で承認されると、今度はそれを電子データ化(XBRL化)して、総会開催日から1ヶ月後までにACRAに提出(登録)します。 その後、この決算書に基づいて、翌年の11月までに法人税の申告を行います。

開示情報の入手

一度ACRAに登記された会社のデータ(情報)は、有料にはなりますが、決算情報も含め誰でも入手することができます。

日本では上場会社でない限りと一般の人が詳細な財務情報を入手することは難しいですが、シンガポールでは上場会社でない一般の会社にも決算書の登記義務があり、それらの会社情報(決算書)は一般の方でも入手することができるようになっています。

(ただし、データベースへのアクセスには、シンガポール国民や就労ビザを持つ外国人に付与されるSingPassという暗証番号が必要なので、シンガポール国外の外国人が入手することできません)

決算書の内容

ACRAに提出することが求められる決算書には、以下の書類が求められます。

① 財政状態計算書
② 包括利益計算書
③ 株主持分変動計算書
④ キャッシュフロー計算書
⑤ 注記
⑥ 取締役報告書(Directors’ Report)
⑦ 取締役宣誓書(Statement of Directors)
⑧ 監査報告書

連結財務諸表の作成義務

子会社や関係会社を有するシンガポールの会社は原則として連結財務諸表の作成が必要です。ただし、親会社が連結財務諸表を作成し公表している場合には連結財務諸表の作成は不要です。 したがって、通常は日本の上場会社のシンガポール子会社は連結財務諸表を作成する必要はありません。つまりシンガポール子会社が子会社(孫会社)や関連会社をもっていたとしても、連結する必要はなく、個別の財務諸表を作成すれば足ります。

(連結財務諸表は公表されている必要があるため、親会社が任意で会社法上の連結計算書類を作成しているような場合には、シンガポールの子会社は連結財務諸表を作成しなければなりません) 

シンガポールの会計基準

シンガポールの会計基準(Singapore Financial Reporting Standard)は、現地のシンガポールの会計士は、SFRSではなく、FRSと呼んでいます。内容は、条文構成や基準番号も含めて、国際財務報告基準であるIFRS(International Financial Reporting Standard)とほぼ一致しています。

シンガポールは世界から企業を誘致することで経済発展を遂げてきた国なので、グローバルスタンダードの採用には当然に積極的です。一方で、あらゆる規則は自国の利益を考えて政策的に決定されており、会計基準も例にもれず、理屈ではなく政策的に変更されている箇所があります。

結果として出来たのが、IFRSをベースにして不都合な部分だけ政策的に少し変更した会計基準、それがFRS(シンガポール会計基準)です。

IFRSとの違いとなる主なポイント

① 連結財務諸表作成義務
② 未送金の海外所得に関する繰延税金資産に関する規定
③ 完成前不動産の売上に関する規定
④ 特例期間内に評価替した固定資産の再評価免除規定

一般的に注意を払っておくべき論点は①のみですが、結果としては、IFRSとの違いを意識するまでもなく、上記の「連結財務諸表の作成義務」で記載したとおり対応しておけば問題ありません。

シンガポールの監査制度

監査が必要な会社の範囲

シンガポールも他の東南アジア諸国と同様に2003年に会社法が改正されるまでは、すべての会社に会計監査が義務付けられていましたが、その後段階的に法定監査の対象が狭められ、直近では2015年7月1日以降開始事業年度から、監査免除会社の範囲がさらに広げられました。会社法改正後の監査免除会社の範囲は右の記事を参考にしてください。➡ 会計監査が必要な範囲について

上記の基準で監査免除会社に該当しない場合には、決算書について会計監査を受ける必要があります。

監査を受けないと…

上記スケジュールで触れた通り、監査済みの決算書は、定時株主総会で承認され、決算書の登記情報に付録され、税務申告の基礎情報にもなりますので、必ず受ける必要があります。

監査証明がないと、①定時株主総会が開けない(株主総会議事録は当局への提出書類になりますので、その提出もできません)②決算書の登記義務を果たせない ③税務申告ができない といった不都合が生じ、これらが遅延するとペナルティが課せられます。

監査法人

日本の公認会計士は、シンガポールで監査証明書にサインする権限がありません。つまり、現地でサポート業務にあたっている日本人会計士でも監査だけは自分でやることができません。そのため、通常監査法人だけは現地の事務所を利用することになります。  

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