5%マークアップ

シンガポール 法人税

5%マークアップとは

シンガポールで会計や税務に携わっていると、よく聞く言葉です。

「5%マークアップを採用していますので問題ないですよ」というように。聞いたことのない人は「はぁ…」でしょうか。私の場合は、最初は「はぁ?」でしたけどね。(なんのこっちゃですね(笑))。

シンガポール子会社がグループ会社のサポートをだけを行うコストセンターのような場合に、便益を受けたグループ会社に対し、シンガポール子会社で発生したコストに5%上乗せした価格を請求する、っというようなことを5%マークアップと言っています。

コストセンターは、通常グループ会社の収益獲得のためのコストを負担しているわけですから、グループ会社は受けた便益の分は負担しなければなりません、本来はこの負担額の妥当性について、企業は「独立企業間価格)」を算定し、その根拠を説明できるようにしておかなければなりません。

しかしながら、すべての取引にそのような説明責任を負わせることは、企業の経済活動にとって過度な負担となる可能性があります。そこで、シンガポール政府は、グループ間のルーティンサポートサービスのような取引についてコスト+5%で取引価格を計算している場合には、その取引価格は妥当なものとして扱うとする移転価格制度の免除特例を設けています。

関係会社間の取引価格の妥当性の証明は、企業にとってはもともと悩ましい問題です。コストセンターは収益獲得を目的としたものではなく、業務の効率化や税負担の軽減などコスト削減を目的としたものだからです。そのようなバックグラウンドがあるものですから、この5%マークアップ、計算のわかりやすさもあって、とてもたくさんの企業で採用されており、その適用範囲もなし崩し的に広がっているという実情があります。

2017年に入り、シンガポール政府は、このような5%マークアップの不適切な運用について管理監督の強化しており、早期是正に向けた取り組みを加速しています。5%マークアップを採用している企業は一度その適否を検証してみたほうがいいかもしれません。

5%マークアップ制度

誤解されやすいですが、関係会社間のどんな取引でもコストに5%の利益を上乗せして価格設定しておけば、税務上おとがめなしになるというわけではありません。関係会社間で価格の決め方がよくわからないとか、サービス(サポート)の範囲がよくわからないから、コストに5%載せて請求(または支払い)しておけばいいというわけではありません。

移転価格文書の作成免除を受けるべく、5%マークアップを採用できるのは、以下のようなグループ内でのルーティンサポートサービスだけです。

【ルーティンサポートサービスについて】
■ 会計・監査
■ 売掛金・買掛金に関する作業(突合作業や検証作業等)
■ 予算の策定
■ コンピュータサポート
■ データベースの管理
■ 従業員の福利厚生
■ 一般的な管理業務
■ 法務サービス
■ 給与に関するサービス
■ 社内コミュニケーション
■ スタッフィングおよび採用活動
■ 税務
■ トレーニングおよび従業員の能力開発

リンク先の移転価格ガイドライの最終ページにルーティンサポートサービスの例示がもう少し詳しく記載されています。➡ 移転価格ガイドライン(IRAS ウェブサイト)

請求側(シンガポール)で留意すべき事項

注意しなければならないのは、グループ間での取引が上記のようなルーティンサポートサービスに当たり5%マークアップの適用対象となることや、対象となるコストの計算(とりわけ、複数のグループにまたがるようなサービスをしている場合のコスト按分計算)については、依然として企業の側に挙証責任があるということです。

5%マークアップだからOK、と意味もなく胸を張ってはいけませんよ。

5%マークアップに関する記載は、関連会社に対するサポートのみを目的とする会社の開設の一部として右のリンク先で解説されていますので、ご参考にしてください。➡ サービスカンパニーについて(IRAS ウェブサイト)

支払側(たとえば日本の親会社)で留意すべき事項

シンガポールの子会社(または関係会社)の発生コスト+5%を基礎にして、取引価格を決定し、シンガポール国内では移転価格の文書化を免れ、税務所得計算上の収益も妥当なものとして扱われたとしても、それが直ちに支払側のコスト(会計上の費用や税務上の損金)が妥当であるということを意味するものではないことです。支払側(負担側)は依然として負担額の妥当性について説明する責任があることに留意が必要です。

 

 

 

 

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