2017年3月31日付でシンガポールの会社法が改正されました。
今回の改正により、シンガポール国内の会社は、「支配権者」(Controller)および「名義貸取締役」(Nominee Director) の名簿を作成し、保管する義務が課されました。 また、外国会社(支店)は、支配権者の名簿の作成保管に加えて、株主名簿をシンガポール国内に備置することが義務づけられました。
「名義貸取締役」(Nominee Director)の説明は、こちらをご覧ください。 ➡ ノミニーダイレクターとは
簡単に言えば、会社が取締役として登録している取締役が名義だけのものと主張するならば、事前にその名簿を作っておいてください、ということです、
ごもっともですね。
支配権者名簿の作成の義務化
今回の法改正、メインは、実はこちら、「支配権者」の名簿です。昨今のマネーロンダリングの防止や国際的な税制不均衡を利用した節税行為への対応の必要性から法改正にまで発展したものです。つまり、会社を利用した不法行為を抑止するため、会社の実質的所有者を予め明らかにさせ、取引の透明性を高める、そんな狙いから会社に「支配権者」名簿の作成が要求されています。
「支配権者」(controller)とは
「支配権者」(controller)とはなんでしょうか。
支配権者とは、会社に対して、① 重要な利害、または、② 重要な支配力を有する個人または法人を言います。
① 会社に対して重要な利害を有するとは、以下の場合をいいます。
a) 会社の株式の25%超を有する
b) 会社の議決権の25%超を有する
また
② 会社に対して重要な支配力を有するとは、以下の場合をいいます。
a) 会社の取締役の過半数を任命・解任する権利を有する
b) 会社の株主決議事項に関して25%超の議決権を有する
c) 会社に対して重要な影響力または支配力を及ぼす権利を有する、あるいは実際に行使している
②のc) は 相当定義が広いですので注意が必要そうですね。
名簿作成の手続き
会社が支配権者等(支配権者と思われる者や支配権者を知っていると思われる者等、支配権者の特定に役立つ関連者を含む)へ通知を送付し、支配権者を特定し、支配権者に係る情報を入手する。通知を送付した相手からの回答に基づいて名簿を作成する。
2017年3月31日以降に設立した会社は、設立から30日以内に名簿を作成しなければなりません。(それ以前に設立した会社は2017年5月末までに名簿を作成しなければいけないので、すでに作成保管が完了していなければなりません)
ACRAへの報告は特に必要はありませんが、年次報告書の中で名簿の保管場所を明らかにし、政府機関から要請があった場合には閲覧に供しなければいけません。なお、株主や会計監査人を含めた一般人は閲覧できません。
支配権者名簿の作成免除会社
以下の会社は名簿を作成する必要はありません。
① シンガポールの認可された証券取引所に株式を上場する公開会社
②シンガポールの金融機関
③シンガポール政府が完全に所有する会社
④法律によって公共の目的のために設立された法廷団体が完全に所有する会社
⑤①~④の完全子会社
⑥シンガポール国以外の国や地域の証券取引所に上場し、証券取引所規則等により十分な開示が行われている会社