どんな形で進出するか、組織の選択肢は3つ
日系企業がシンガポールに進出しようとする場合、以下の3パターンが選択肢として挙げられます。
① 会社
② 支店
③ 駐在員事務所
各組織形態の概要は以下の通りです。
① 会社
シンガポールでは、国家安全保障に係る分野や公益事業等を除いて、つまり一般的な業種では外資参入規制はないため、基本的に政府当局への設立許認可等を得ることなく、外国資本100%での会社設立が可能です。そのため、シンガポールでの会社設立は非常に簡単かつスピーディーに行うことができます。経営の自由度の高い非公開会社(private limited company)が最も一般的に選択される会社形態です。
設立時に現地居住の取締役を1人以上選任する必要があります。また現地在住の秘書役を1名以上を設立後6ヶ月以内に選任しなければなりません(秘書役とは取締役会議事録など法的書類を管理するため会社法で要求されている会社機関です)。さらに、会計監査が必要な場合には設立から3か月以内に会計監査人を選任・登記しなければないなど、会社の運営に必要な機関等の選任・登記に会社法上の様々な制約がかかります(日本の親会社がある程度大きい場合には通常会計監査が必要な会社に該当します)。
一方で、シンガポール法人であるため、当然にシンガポールの税制が適用され、低い法人税率や日本親会社への支払配当への源泉非課税などの税制面のメリットを享受することができます。
② 支店
シンガポールの支店は、外国企業(本社)の一部であり、外国会社(foreign company)として登録されます。支店開設も会社法同様、政府当局への開設許認可等は不要であり、手続きは非常に簡単です。また、現地での活動について基本的に制約はなく自由に営業活動を行うことができます。
取締役は外国企業と同一ですが、設立にあたって現地在住の代理人(Aushorized representative)が1名必要です(改正後会社法 2016年以降適用)。会計監査は必ず必要で、現地で営業活動をしているため税務申告も必要です。最終的には日本本社の会計と合算され日本の税率で課税されます。
支店については、右のリンクでも詳しく記載しています。シンガポール 支店について
③ 駐在員事務所
駐在員事務所の開設にあたっては、国際企業庁(International Enterprise Singapore:IE)への登録が必要です。シンガポールで本格的に営業活動を行う前の段階での市場調査や情報収集等が主な設置目的として想定されており、営業活動は一切行うことできません。また、そもそも外国企業の一出先機関であるため法人格もないため、シンガポールにおいては一切会計や税務に関する義務はありません。
なお、駐在員事務所を開設できる外国企業は設立後3年以上経過しており、売上が25万米ドル超でなくてはならず、さらにシンガポールに配置する駐在員が5名未満でなければなりません。また、設置可能期間も3年以内に制限されているため、3年を超えて活動を行う場合には支店または会社の組織形態に移行する必要があります。
駐在員事務所については、右のリンクでも詳しく記載しています。シンガポール 駐在員事務所について
まとめておきましょう!
結局、会社以外は、シンガポールの低い法人税率の恩恵を受けることができないという視点が最も重要ではないでしょうか。
その視点を押さえたうえで、①営業目的ではなく将来撤退の可能性がある程度高い場合には駐在員事務所を ②日本本社の名前を使って営業した方が有利である場合やしばらく利益計上が見込めず日本で納税した方が有利であろうと思われる場合には支店を 選択する可能性を模索すれば良いでしょう。