海外勤務者の給料を、現地通貨による現地支給と日本円による日本支給に分割して、支給することがよくあります。
①為替リスクを回避する目的で、現地で使う分だけを現地の通貨で支給してもらい、残りは日本円で日本の口座に支給してもらったり、②単身赴任の場合などで日本に住む家族を養うために、給与の一部を日本円で日本の口座に支給してもらうというように(この場合の日本支給額は「留守宅手当」といわれます)。また、③現地での支給額は、現地勤務者の不平等感をおさえるため現地の給与水準で支給し、本来の給与と現地給与の差額を日本の口座に支給するということもよく行われます(この場合の差額支給額は「給与格差負担金」といわれます)。
さらには、日本での給与支給額がなくなってしまうと、社会保険料(厚生年金や健康保険料など)の計算基礎がなくなりそれらを支払うことができず、将来の年金受給額の減少や日本に残した扶養家族の健康保険がなくなってしまうなどの不利益が生じることがあります。これを回避するために、あえて給料を分割し、日本での支給額を残すということもよく行われています。
この場合、日本での支給額を少なくすればするほど、社会保険料の計算基礎が小さくなるため、社会保険料そのものも少なくなります。
このように日本での支給額を少なくしたほうが納付すべき社会保険料自体は少なくて済むため有利であるため、これに対して何か規制があってもおかしくなさそうです。が、結論としてはこれに規制はありません。すなわち、現地支給額と日本支給額の割合は従業員あるいは会社が自由に決めることができます。
ただし、厚生年金保険料などは納付額が少ないと、その分将来の受取額が少なくなるので注意が必要です。(将来年金が受け取れれば、ですが…泣)
所得税との関係(受領者側)
非居住者の場合、日本で支給されようと、海外で支給されようと、海外勤務に基因して支払われたものなので、これに対する所得税は海外で納めます。
つまり、上記の「留守宅手当」や「給与格差負担金」も現地で受取った給料と合計して、現地の所得となり、合計に対して所得税を計算して納付することになります。
法人税との関係(支給者側)
法人税基本通達9―2―47(出向者に対する給与の較差補償)では「出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するため出向者に対して支給した給与の額(給与格差負担金)、及び、出向先法人が海外にあるため出向先法人が支給する「留守宅手当」の額は出向元法人の損金の額に算入する」と規定していますので、海外出向者に支給する「留守宅手当」や「給与格差負担金」は、基本的に損金(税務上の費用)になります(寄附金と認定されることはないです)