いてんかかくぜいせい?移転価格? なんだか難しそうですね。
要は、低税率の国の会社で利益が出るように、グループ会社間の取引価格を操作することを規制する制度ですね。
まずは簡単な具体例でみてみましょう。
日本の会社では、通常原価80万円の商品を100万円でタイに売っていたとします。利益は20万円ですから、法人税等は6万円くらいでしょうか。(法人税等の税率が30%と仮定します)
ここでシンガポールの子会社を作って、シンガポールに原価のまま(利益なしで)80万円で売って、それからタイに100万円で売ったとします。そうすると、日本では利益がなくなりますから税金がゼロ。一方シンガポールでは利益が20万円発生してそれに税金が2万円くらい(税率を10%と仮定します)になります。
グループ全体でみると、日本からタイへ直接売っていた場合には、日本で税金6万円が発生していたのに、シンガポールに通常よりも安く売ってからタイへ売った場合には、日本では税金がなくなり、シンガポールでの税金が2万円、トータルの税金は2万円となり、4万円も税金が安くなります。
税金は少しでも安い方がいいので、こういうスキームは経営者なら誰でも考え付くでしょう。グループ会社相手だから価格も自由に決められますし。しかし、これでは日本の税収が減るばかりです。
日本政府としては、適正な価格で取引して、然るべき税金を日本で納めてほしいわけです。これが、移転価格税制の基本的な発想です。
これを専門家が説明すると…
これのような取引を防止するための制度を税務専門家が説明すると、「海外に所在する国外関連者との取引価格を操作することによる所得の海外移転を防止するため、その取引について第三者との取引価格、すなわち、独立企業間価格を用いて所得を再計算し課税する制度」すなわち「移転価格税制」です、ということになります。
急に取っ付きにくなります。が、制度の土壌は上の簡単な例の通りなので、大事なことは、その基本的な発想からくる税務当局の懸念を満たしてあげるように対策していくというっということです。利益(所得)の付け替えなんかしてませんよっということを証明しておくわけです。
独立企業間価格って?
独立企業間価格とは、当該国外関連者間取引と同様の状況のもとで、独立第三者間において同種の取引が行われた場合に成立すると認められる価格、すなわち経済合理性のある取引関係に基づく適正な価格です。要は、普通にグループ外の会社と取引したらいくらかってことです。たまにALPとか言ってくるスカした税理士さんもいます。Arm’s Length Priceの略です。そんな時は遠慮なく日本語でお願いしますといって、すぐに牽制球を放っておきましょう。
独立企業間価格。ALP。概念としては、簡単なんですが、これが適正であるということを証明するのは実は簡単じゃない場合があります。
先の例では、タイに100万円で売っていたのを、シンガポール経由に変えただけなのでまだわかりやすかったんですが、例えば初めて売る商品だったり、製造品で原価計算が簡単ではなかったり、原価以外にも様々な輸送コストが発生したり、といういろいろと通常あるべき価格が決定しにくい状況が発生します。
取引ボリュームが大きくなると、小さな計算ロジックの相違が多きな金額差になることもあり、それゆえ慎重な対応が必要になってくるわけです。