IFRSのための会計英語|無形固定資産の英語表現とよくある論点

海外勤務をはじめると急にポジションが上がってビジネス英語だけでなくIFRSをはじめとする会計英語が必要になることがよくあります。海外には会社の規模に関わらず会計監査が義務付けられている国もたくさんあるので、基本的な会計英語は押さえておきたいですね。

今回は、無形固定資産について。

無形固定資産というのは、漢字のとおりですが、形の無い固定資産です。

ソフトウェア、特許権、著作権、商標権などはイメージしやすいのではないでしょうか。目には見えないですが、資産としての価値はありそうですよね。

会社を買った時に発生する「のれん」なんかも有名な無形固定資産です。よくニュースを賑わせていますよね。何十億ののれんの減損によって大幅赤字転落みたいな記事を時々目にします。

そしてIFRSと日本基準の相違(違い)とかいうと、よく論点になるのが、開発費ですね。なんだかマニアックな論点ですが、概要だけおさえておきましょう。

この無形固定資産の話しですが、よくわかっていない会計士さんが結構多いので、ざっと理解しておくだけで、優位にたてることがよくあります(笑)。

まずは英語表現から押さえてしまいましょう!

無形固定資産は英語でIntangible asset(インタンジブル・アセット)です。有形固定資産は、Fixed Asset ともとも言いますが、特に無形固定資産と区別する場合には、Tangible Asset(タンジブル・アセット)といいます。

さきほど、無形固定資産の説明で、目に見えないと書きましたが、日本語の感覚だと目に見えない資産という感じなんですが、英語の感覚だと触れることができない(In-Tangible)資産という表現になります。自分中心で発する言語、英語らしいといえば英語らしい感じです。

まずは、無形固定資産に関する英語表現をまとめておきましょうか

日本語 英語
無形固定資産 Intangible Assets
ソフトウェア Software 
ソフトウェア仮勘定 Software in progress
特許権 Patent(right)
商標権 Trademark(right)
著作権 Copyright
借地権 Leasehold right
電話加入権 Telephone subscription right
施設利用権 Right of using facilities
のれん Goodwill
創立費 Deferred organization expenses
開業費 Business commencement expense
新株発行費 Stock issuance cost
社債発行費 Bond issuance cost
開発費 Development expenses
償却費(無形固定資産の) Amortization

あたりでしょうか。

最後の Amortize(アモタイズ)は、少し注目ですね。有形固定資産の場合の償却は、Depreciate(Depreciation)ですが、無形固定資産の場合は、Amortize(Amortization)です。

また、そもそも、英語の財務諸表では、日本のように、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産、繰延資産みたいな区分は重要ではないので、ソフトウェアやのれんが、Intangible assets の区分から外れて表示されることもよくありますし、日本でいう繰延資産はIntangible assetsとして位置付けられたりします。

IFRSと日本基準の違い

無形固定資産は、IAS第38号の「Intangible assets」に規定されています。有名な論点は以下の2点ですかね。細かいところまで覚えようとしても忘れるので、大項目(タイトル)だけ押さえておくのがいいと思います。

耐用年数を確定できない無形資産の償却禁止です

IFRSでは耐用年数を確定できない無形資産は償却することができません。毎期減損のテストを実施して、減損が必要となったところでドーンと落とします。

日本の基準では、効果が継続する年数を見積もって、その期間にわたって償却していくのとは大きく違います。

これの制度の違いが、よくニュースになる事案のバックグラウンドにあります。

のれんの話しです。

日本では、貸借対照表の「のれん」は償却されて毎期費用になって消えていきますが、IFRSでは償却されません。のれんの耐用年数なんかわからないから、償却なんかできないでしょというのがIFRSのスタンスです。

その結果、企業買収でのれんが発生した場合(純資産額よりも大きな金額で会社を買った場合)、

その時に発生するのれんを償却する分、日本の方が毎期の費用が大きくなります(不利です)。IFRSの場合には、のれんを償却しない分、日本の基準の場合よりも毎期の費用が少なくて済み、そのため利益も大きくなります(有利です)。

誤解を恐れずに言うと、会社を買収をした場合には、IFRSの方が当面の利益は大きくできます。

なんか、海外の基準の方が厳格で、日本の基準の方が緩い。なんて勝手なイメージをもっていませんか?

IFRSを採用すると、企業買収したときの損益計算書上の利益が、日本の基準よりも大きくなります。これが、M&Aの多い会社が、IFRSを採用したがる理由です。で、買った会社の業績が悪いと、のれんの減損でドーンと計上されて、大きな損が出ます(笑)。

開発費の資産計上が必要になります

これも、IFRSと日本の基準の違いとして、よく説明されますが…。

そんなグレーゾーンの開発を進めている会社は多くないと思います。

セミナーなんかに行くとこんな説明をされます。

日本基準では、研修開発費は原則として費用処理されますが、ISA38号では、研究開発活動を研究活動と開発活動に区分し、開発活動での支出のうち、以下の6要件を満たしたものは資産計上しなければなりません。

  1. 無形資産を完成させることが技術的に実行可能であること
  2. 企業が無形資産を完成させ、使用・売却する意図を有していること
  3. 企業が無形資産を使用・売却する能力を有していること
  4. 無形資産から経済的便益を引き出す手法(市場や使用形態等)が特定されていること
  5. 無形資産を完成させ、使用・売却するために必要な資源を利用できること
  6. 開発期間中の無形資産に起因する支出を信頼性をもって測定できること

ここで、会社経理としては色めきだつわけです。

おお、日本なら費用計上なのに、IFRSなら資産計上か。ということは利益が増える!って感じで。

そうすると、講師は言う訳ですよ。

なお、この6つの要件を満たすものについては資産計上しなければなりませんが、同時に資産計上する場合には、この6つの要件を満たしていることを客観的に立証しなければならず、そのための企業内の仕組みづくりも必要になります。

まあ、これがお決まりのパターンです。

そうです。6つの要件を立証するのは大変なので、コンサルしますよってね。

いずれにしても、基準の違いで、利益が変わるのが、この無形固定資産の会計基準です。

IFRS の方が日本基準よりも、先に利益が出ます。

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